2020年9月20日 サンデーモーニング(後編)

2020年9月20日 サンデーモーニング(後編)

9月20日のサンデーモーニングのレポート後編です。

今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。


【VTR要約】
16日、アメリカの中央銀行に当たるFRBは、金融政策を決める会合でアメリカ国内の経済を下支えするためゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続する方針を明らかにしています。
FRB・パウエル議長「物価上昇が長期的に平均2%となり、長期の物価上昇期待を2%に固定させるため、当面の間 緩やかに2%を超える物価上昇の達成を目指す。」と述べました。
一方、日本銀行は17日、金融政策決定会合を開き現在の大規模な金融緩和策を維持することを決めました。景気判断についても、持ち直しつつあるとして上方修正しています。

【コメンテーター発言内容】
寺島氏(全文):中央銀行と政権との関係はものすごく重要で、いい意味での緊張関係を持ってなきゃいけないんですね。 アメリカの中央銀行FRBは景気、実体がよくなってくると金利も上げてという柔軟に対応する自立心を持っているなというのがわれわれが見ているFRBだ。今般コロナになって世界中が緊急経済対策で金融をジャブジャブにしていってアメリカも金利をゼロにまで持ってきているわけだけど、大切なのは日本なんですね。日本はコロナに入る前からマイナス金利にまでもっていってジャブジャブにしている。中央銀行の弾力性だとか自立性というものをもう一回、われわれはこのニュースを見ながら考えるべきだと思います。

【検証部分】
今回の報道はFRBについての報道に加え日本の中央銀行、すなわち日本銀行のあり方について言及されています。寺島氏は、日本の中央銀行には弾力性、自立性がなく、それを取り戻すべきだという指摘をしています。

まず、中央銀行とは何か、またその役割について確認します。中央銀行とは、国家や特定の地域の金融機関の中核となる機関のことをいいます。主な役割としては、通貨の流通量の調節、市中銀行への資金の貸し出し、政府の預金の受け入れの3つがあります。今回問題となるのはそのうちの1つ目です。日本銀行は日本で唯一、紙幣を発行する権利を持っている機関です。日本銀行は紙幣の発行量を調節することによって市中の貨幣の流通量や物価を安定させます。また不景気の際には発行量を増やすことで景気を上向かせ、逆に好景気の際には発行量を減らして景気の過熱を防ぎます。

このことを踏まえ、報道で言及されていた日本銀行の弾力性、自立性について考えます。弾力性というのは、紙幣の発行量を増やしたり減らしたりというのを、柔軟に行えるかどうかということです。ここで紙幣の発行量の増減を決める基準となるのは、景気の変動です。景気が悪いときには通貨量を増加させて経済活動を活性化させ、逆に景気がいいときには通貨量を減少させ景気の過熱を防ぎます。
最近の日本の景気の動きを見れば、コロナ以前から日本は不況にあり、コロナによってさらに深刻な不況に陥ったことは明らかです。しかし寺島氏は、今マイナス金利政策を見直す、つまり通貨発行量を減少させるべきと主張しています。これは景気の変動を完全に無視した発行量の調節です。景気変動に従うのであれば発行量を増やし景気を回復させるのがセオリーであり、これまでマイナス金利だったから、また世界中の国々が金利を引き下げているからという理由で金利を引き上げてしまっては、景気のさらなる悪化が懸念されます。

次に、日本銀行の自立性について確認します。中央銀行の自立性というのは、紙幣の発行は日本銀行の専決事項であり、機関の外、特に政府からの介入を受けないということです。しかし一方で、政府の経済政策、金融政策との整合性を確保するために「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図」るべきという義務も規定されています。
この相矛盾する制度を考える上で「目標の独立性」と「手段の独立性」の2つの分類が生じます。そして現在の経済学界の定説では、「手段の独立性」のみが中央銀行に与えられるとされています。つまり、目標インフレ率2%などの目標設定には政府の関与が認められ、それを達成するための具体的な政策は中央銀行の専決事項だということです。つまり、日本銀行には一定の独立性が認められているものの、基本的には政府の方針に沿っていることが前提となるのです。
この考えに従ったとき、日本銀行がマイナス金利政策を止めて金利を上昇させることが、中央銀行の自立性の名のもとに許されるのでしょうか。日銀の独立性は、その政策が、政府もしくは政府と日銀が定めた目標を達成するためである場合にのみ認められます。このとき、目標が景気回復、インフレであったならば、マイナス金利を止め金利を上げることはその目標に反するため、認められません。しかし寺島氏は、日銀が政府からの「目標の独立性」を確保し、自由な方針決定をすることができる、またするべきであるという発言をしています。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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